
「子どもと博物館って、正直ハードルが高いのでは?」「展示は難しそうだし、静かにできるかしら」
そんな気持ちを抱えながらも、今回は思い切って東京国立博物館へ足を運びました。理由はひとつ。期間限定で登場している子ども向け遊具コーナー「あそびば とーはく」があると知ったからです。下の子も楽しめるかもしれないし、それなら“今”がチャンス。そう思い、4歳と1歳の子どもたちを連れて訪問してきました。
→東京国立博物館公式サイト「あそびば とーはく!」の詳細はこちら
まずは建物に感動、親の心が満たされる場所
上野公園の緑を抜けて見えてくる東京国立博物館の本館。重厚で気品のある外観は、何度見ても圧倒されます。正面玄関を入ると、ドラマ『半沢直樹』で「東京中央銀行」の本店ロビーとしてロケ地に使われた大階段が目の前に広がります。高い天井に、差し込む光、足音が響く静けさ。まるで映画のワンシーンのような空間に、私は思わず足を止めました。
「来てよかった」と思うのも束の間、隣では4歳の娘に「はやくいこうよ!」とせかされ、向かう先は遊具コーナー。親の感動より、子どもの期待が優先です。
今回のお目当ては、博物館側が“もっと多くの子どもたちに博物館を知ってもらいたい”という思いから企画した子ども向けスペース。入場は1時間制で、混雑することなく安心して遊べる工夫がされています。

中に入ると、そこは“和”をテーマにした遊びの空間が広がっていました。富士山のような大きな滑り台があったり、鷹のぬいぐるみが入ったボールプールがあったり。松や梅をモチーフにしたクッションが置いてあったり、おみくじコーナーなんてものもありました。日本文化のモチーフが随所にあしらわれたかわいらしいデザインが目を引きます。

4歳の娘は滑り台を何度も滑り、1歳の娘もボールプールの中で嬉しそうに声を上げていました。とかく博物館は静かにしなければならない場所というイメージがありますが、まずは体を動かして“楽しい場所”として記憶に残す。その接点づくりが、とても自然で上手だと感じました。

思った以上に展示に夢中に
しっかり1時間遊んだ後、本館の展示へ向かいました。1歳の娘がベビーカーに乗った瞬間、すぐに眠りに落ちてくれました。普段なかなか思い通りにならないことばかりなので、計算通りに行った時はとても嬉しいものです。
体を動かした後だったからこそ、自然な流れでお昼寝。おかげで私と4歳の娘はゆっくりと展示を楽しむことができました。そして驚いたのは、4歳の娘の変化。気づくと、遊具コーナーよりも長い時間、館内の展示を一緒に見ていたのです。
娘が足を止めたのは、日本画の展示でした。内容というよりも、“見せ方”に強く反応していた印象です。デジタル画面に触れるとページがめくれたり、拡大して細部まで見られたり。動きに応じて効果音が聞こえてくるのも面白かったようです。

「わあ、動いた!」「もう一回やってみる!」
理解するというより、触れる。自然と作品との距離がぐっと近づいているようでした。

浮世絵スタンプ体験が大ヒット
特に盛り上がったのは、スタンプを重ねて浮世絵を完成させるコーナー。スタンプ好きの4歳の子にとっては夢のような場所のようでした。

「つぎこれ!」「きれいにできた!」
遊びながら版画の工程を体験できる仕組みは、大人が見てもよくできています。周囲には外国人観光客の姿も多くあり、言葉が分からなくても同じように楽しんでいました。

芸術は、やはり“体験”なのだと改めて感じました。
館内案内の一部には、展示物をモチーフにした触れられるサンプルが設置されていました。実際の質感を感じられる仕組みです。「本物は触れないけど、これならいいよ」ということでしょう。触ることで、理解は一段と深まります。見るだけでなく、感じること。博物館が子どもとの距離を丁寧に縮めようとしている姿勢を随所に感じました。

博物館で迎えた、思いがけないご褒美時間
気づけば、私の方が先にお腹が空いてしまい、まだ展示を見たいと言う4歳の娘を説得し館内のレストランへ。窓際の席から見えたのは、早咲きの梅の花。その日は雪が降った後で、枝にふわりと雪が積もっていました。
白と淡い桃色のコントラスト。静かに佇む木々。まるで一枚の日本画のような景色が広がっていました。
「すごいきれいだね!」
娘と顔を見合わせながら、その風景を眺めました。展示の中で見た日本画と窓の外の風景が重なるその瞬間を、娘と共有できたことがなにより幸せでした。
博物館は、展示を見るだけの場所ではない。空間そのものが、文化体験なのだと感じたひとときでした。
博物館で子どもと長時間、静かに過ごすのは簡単ではありません。しかし、今回感じたのは、「体を動かす時間をつくる」「短時間でもいいと割り切る」「親も楽しむ余裕を持つ」の3つのポイント。これによって、ぐっとハードルが下がります。
建築そのものの美しさ、本物の作品が見せてくれる迫力。そして、窓の外から見える季節の移ろい。子どもと一緒にいながら、自分の感性も取り戻せる。そんな時間をこれからも大切にしたいと思いました。
文化体験は“早すぎる”ことはない
難しいことを理解する必要はありません。「楽しかった」「きれいだった」「また行きたい」。その感覚があれば十分。東京国立博物館は、親子にとって“最初の文化の入口”として、とても優しい場所でした。
遊びから始まり、展示へ広がり、最後は季節の風景まで味わえる一日。親子で過ごす文化体験は、日常を少し豊かにしてくれます。もし迷っている方がいたら、ぜひ一度足を運んでみてください。思っているより、ずっと楽しめます。
帰り道、4歳の娘がこう言いました。
「またいこうね!」
母はその言葉だけで十分です。






