
公益社団法人中越防災安全推進機構・理事の稲垣文彦さんにインタビューを実施しました
株式会社ピコトンは防災コンテンツの開発に注力しています。
弊社代表の内木と役員の笠原は、先日「防災士」の資格を取得し、より幅広い防災コンテンツの開発に努めています。
防災士研修で出会った、公益社団法人中越防災安全推進機構・理事であり、災害ボランティア活動の専門家である稲垣文彦さんにインタビューを実施しました!
稲垣文彦さんは、災害ボランティア活動の専門家

防災士研修センターで防災士研修の講師を務める稲垣さんは、災害ボランティア活動の専門家です。
2004年におきた新潟県中越地震の際は、長岡市の災害ボランティアセンター※山古志班のコーディネーターとして活動されました。現在は、公益社団法人中越防災安全推進機構・理事を務められています。
災害復興と地域づくりを専門に、長岡技術科学大学大学院工学研究科の博士号(工学)を取得しており、関西学院大学災害復興制度研究所の研究員としても活動されています。
稲垣 文彦
公益社団法人中越防災安全推進機構・理事
1967年、新潟県長岡市生まれ。長岡技術科学大学大学院工学研究科博士後期課程修了。博士(工学)。専門は、災害復興と地域づくり。外部人材を活用した新たな内発的発展論を展開し、地域づくりにおける住民の主体形成プロセスを研究。国の地域おこし協力隊、集落支援員、関係人口、地方移住の施策等の普及、人材育成等に尽力。
他に総務省地域力創造アドバイザー、地域おこし協力隊サポートデスクスーパーバイザー、地域おこし協力隊アドバイザー、国土交通省令和5年度二地域居住等に関する懇談会委員、内閣府令和5年度関係人口創出・拡大のための対流促進事業選定委員会委員、NPO法人ふるさと回帰支援センター 副事務局長等。
主な著書として「震災復興が語る農山村再生 地域づくりの本質(2014)コモンズ」等。
※ 災害ボランティアセンター
災害ボランティアセンターは、被災した世帯などからボランティアニーズを収集し、その世帯へボランティアを送るためのボランティア募集やコーディネートを行います。 しかし、やり方によっては支援が必要な世帯へ支援が行き届かなかったり、本来支援が必要ないところにボランティアが入ることで、逆に地域の共助を阻害してしまうことがあることから、地域コミュニティや要援護者支援団体などと連携を図りながら支援活動を行います。
引用元:長岡協働型災害ボランティアセンター「役割と機能」
子どもたちの役割が、避難所を変えていくー西原村の避難所
今回のインタビューでは、弊社代表内木がインタビュアーを務め、稲垣さんに災害ボランティアの現場についてお話を伺いました。
――災害発生時、子どもたちが避難所に来たとき、どんなことで困っていると思いますか?
まず大きいのは、「甘えられない」ことです。避難所では大人も自分のことで精一杯ですから、子どもたちが気を遣って、甘えたりできなくなるんですね。 でも、そんな中でとても印象的だったのが、熊本地震のときの西原村の避難所の事例です。
――どんな避難所だったのでしょう?
そこでは、小学校1~2年生の子どもたちが、避難所の放送で「おはようございます。ラジオ体操やりましょう!」と呼びかけていたんです。その一言だけで、場の空気が一気に変わるんです。
うなだれていた大人たちも「よし、頑張ろう」と思える。子どもたちの力って本当にすごいんです。 中学年の子は避難所の掃除をしていましたし、高学年の子は小さい子や赤ちゃんの面倒をみるといった役割を担っていました。
――それによって、どんな変化が起きたのでしょうか?
お母さんたちから「赤ちゃんを連れていてもすごく居やすい」と評判だったんです。周りの人が「泣いても大丈夫だよ」「泣くのが仕事だから」と声をかけてくれる。気を遣いすぎずに過ごせる。そんな避難所になっていました。
子どもには「場を和ませる」「コミュニティを作る」力があります。それが自然と大人を動かしていく。避難所で“守られる存在”としてだけではなく、“役割を持つ存在”として子どもを見ることがとても大切だと感じました。
――その避難所には、メディアも注目したそうですね。
はい、BBCやNHKが取材に来ました。やはり理想的な避難所だったんだと思います。 子どもたちがしっかりしていると、大人も「自分も頑張らなきゃ」と思うようになります。避難所での主役は大人だけじゃない。子どもにも、ちゃんと力があるんです。
防災は“社会課題”に向き合うチャンスでもある
――現代社会の中で、防災にはどんな役割があると考えていますか?
災害の形は、社会の形を映し出します。孤独な高齢者、言葉が通じない外国人、相談できないシングルマザー、経済的な困難……さまざまな問題が表面化します。
でも、防災はそれをつなぐチャンスでもある。だからこそ、子どもの存在がキーになる。子どもが場の空気を変え、人を動かす。そういう力があるんです。
「“やってあげる”支援は逆効果?」自立を支えるボランティアのあり方

――高齢者への支援のあり方についても、課題があるとお聞きしました。
はい。避難したお年寄りを心配するあまり、本人ができる事も含めて「全部やってあげる」ことは、逆にその人の元気を奪ってしまうことがあります。何かしてあげようという気持ちは大切ですが、その方としっかり向き合いやりすぎないことが大事なんです。
例えば「食堂スペースを設けて、被災者自身ができることをする」という形がとても良かったです。料理をしたり、おしゃべりをしたり。それだけでも孤独感は減りますし、自分の力で生きているという実感にもつながります。
――「支援の目的は自立を促すこと」ということですね。
まさにその通りです。ボランティアの形も様々で「話を聞くだけのボランティア」や、地域のおばあちゃんから「笹団子の作り方を教えてもらう」といった、一緒に笹団子を作って食べるというのも立派なボランティアです。笹団子作りはとても有効でした。
「かわいそうだから」「何かしてあげなきゃ」という思いが、かえってマイナスになることもある。だからこそ、本人がやれることを引き出すのが、ボランティアにとって本当に大切な役割なんです。
「一杯のコーヒー」が避難所を変えたー郡山ビッグパレット

――避難所の雰囲気を変えた、印象的なエピソードがあるとか?
郡山ビッグパレットでは、2,000人以上が避難していました。不安の中で顔も知らない方たちが集まると、トラブルになりやすい環境が生まれてしまいます。
そこに業務用のコーヒーメーカーが偶然支援物資として届いたんです。 ボランティアスタッフが使い方が分からず困っていたところ、ずっと寡黙だったおじさんがスッとやってきて、「コーヒーいれようか」と黙々と作業を始めたんです。
そのコーヒーの香りが広がって、人が集まり、自然と会話が生まれて、最終的には「カフェコーナー」ができました。ギスギスとした避難所全体の雰囲気が、そこから大きく変わっていったんです。後から聞いたら、そのおじさんは地元の喫茶店のマスターでした。
――小さな行動が、大きな変化につながったんですね。
本当にそうです。「できることをする」「ちょっと動く」だけで、人の気持ちが変わる。あの時の体験は、今でも忘れられません。
「防災は、誰かのためにやる」ことが、力になる――。
「守る側・守られる側」という垣根をなくし、誰もが役割を持って関われる防災の形。
子どもが活躍できる場所があること、それが地域の力になる。 私たちが今できることを、少しずつ始めていくことが大切だと感じています。
防災は「人と人」をつなぐ
――都会では近所づきあいも難しくなっていますが、防災が突破口になるのでしょうか?
はい。防災訓練をきっかけに、近所の人と顔見知りになることができます。
たとえば、おばあちゃんと子どもが一緒に笹団子を作る、昔話を聞くなど、世代を超えた交流がとても大切です。今は挨拶ひとつもしづらい社会。でも、地域の防災訓練で近所の人の顔が分かるようになり、挨拶する関係が出来るなど、人と人がつながるきっかけになります。
親子でチャレンジ!家庭でできる「ちょっとした防災」

――家庭で気軽にできる防災の取り組みはありますか?
被災1日目は冷蔵庫の中のものを食べるところから始まります。いきなり防災食じゃない。そこで、「電気・水道が止まった状態で、カセットコンロとペットボトルの水があったら何ができるか?」を家族でシミュレーションしてみるといいです。
月に1回、非常食として備えているカレーを食べる「ローリングストックカレーの日」みたいなものを作ってもいい。大事なのは、楽しみながら、家族で会話することです。それだけで、防災としては大成功と言えます。
――防災は、楽しく続けるのが大事ですね! 避難訓練なども、「サバイバルゲーム」の要素を取り入れてみても良いですね。
「子供たちにたくましく育ってほしい」という想いは親御さんは皆持っているので、災害のためにじゃなく、生きる力(サバイバル能力)になるといった要素が重要です。
実際、関東大震災のときは多くの人が疎開をしました。 今住んでいる場所が都心なら、生活様式が違う田舎のエリアに行く体験だけでも防災訓練になる。キャンプはもちろん、虫取り体験なども、「楽しみながら」生きる力を磨くことに繋がります。平時でも、日頃から行えるちょっとした防災をする事が命を守るために何より大切です。
お家でいうと、家具の固定はものすごく大事ですし、日々防災グッズを持っておくこともとても大切です。
「あらゆる状況を具体的にイメージして備えておく」ことが、防災において欠かせないポイントです。
訓練は「具体的」に想定する事が大切です

――最後に、親御さんに伝えたいメッセージはありますか?
避難訓練では「何が、いつ、どこで起きるか?」を具体的に考えることが大事です。
――防災士研修で「どんな災害か」を具体的に考えないで、何となく訓練をしているケースがあったというお話が印象的でした。あのお話から、防災コンテンツのアイデアを考えました。例えば、専用のサイコロをデザインして、「平日/休日」「昼/夜」「地震/台風/火事」などの条件を決め、家族で「じゃあこのときどうする?」と話し合ってみるというのはどうでしょう?

いいですね!防災を考える時に「具体性」はとても大切です。どれだけリアルに想定して物事を考えられるかが、災害発生時の命を守る行動に繋がります。「子どもがどこにいるか?親はどこにいるか?どこに避難するか?」など、具体的な行動を想定して、家族で話し合っておくことが重要です。「防災サイコロ」はとてもいいアイデアですね。
専門家の協力のもと、ピコトンは防災コンテンツの開発に力を入れていきます


今回のインタビューで、平時からできる防災や、親子へのメッセージ、災害発生時の避難所にまつわるお話や子供が持つ力についてなど、幅広くお話してくださった稲垣文彦さん。
ピコトンでは、今回のインタビューでお話にあがった、家族で具体的な話し合いが行えるツール「防災サイコロ」の実現に向けて企画開発を進めます。稲垣さんには、こちらの開発監修をご快諾いただきました!
株式会社ピコトンは今後も、防災に役立つコンテンツ開発により一層努めて参ります。
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